プロ用空撮ドローンの充電に選ばれた電源システム!

プロ用空撮ドローンの充電に選ばれた電源システム!


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高出力なリチウムイオンバッテリー


 コンパクトで耐久性の高いリチウムイオンバッテリー。その特性を生かして、多方面での活用が進んでいる。体積に対して効率のよい働きをすることから、コンパクトなスマホやパソコンなどは、ほとんどがリチウムイオンバッテリーに変わってきた。

 これまでのバッテリーに比べて、省スペースであるのはもちろんのこと、さらに大きなアドバンテージがあるのだ。それが、リチウムイオンバッテリーのもう一つの特徴としてあげられる高出力。特に大型家電を使うキャンピングカーでは注目されている。


 例えば、キャンピングカーの中で利用される100V仕様の電子レンジや家庭用クーラー。これまでの鉛ディープサイクルバッテリーなどのバッテリーでは実用性が低いとされてきたが、リチウムイオンバッテリーの高出力によって、実用レベルに達したといっていい。


クルマ用リチウムイオンバッテリーの安全対策


 しかし、リチウムイオンバッテリーの優位性を理解しても、少なからず不安を感じる人もいる。それは、時々、スマホのバッテリー発熱などが話題になるからではないだろうか。そこで知ってほしいのは、リチウムイオンバッテリーにはいろいろな種類があること。

 モバイル端末に使われているバッテリーはコンパクトかつ高性能なため、体積エネルギー密度が高いバッテリーだ。一方でキャンピングカー向けとしてエネルギー密度が低くいタイプ。特に今回紹介するオンリースタイルのリチウムイオンバッテリーは、リン酸鉄リチウムイオンという種類で、他のリチウムイオンバッテリーに比べ、エネルギー密度が低く安定しているタイプ。


 通常使用において、鉛ディープサイクルバッテリー同等以上の安全性があると言っても過言ではない。モバイル端末で採用されているリチウムイオンバッテリーより体積(サイズ)が大きくなってしまうが、リチウムイオンバッテリーとしての高出力性能を維持し、より高い安全性を担保することが可能になっている。


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鉛ディープサイクルバッテリーではできなかったこと


 たくさんの電気が必要であれば、鉛ディープサイクルバッテリーなどの数を増やすだけでいいのではないか、という考え方もある。しかし、いくら容量を増やしても、高出力と繰り返し使うための急速充電能力はカバーできない。それを苦々しく思っていたのがフォトグラファーの林明輝氏だ。


 自然などを撮影することが多く、屋外で撮影機材への充電が必要で、当初は鉛バッテリーを利用していたという。しかし、どうしてもうまく充電ができない。そこで、インターネットで探し出したのが、オンリースタイルのリチウムイオンバッテリーだった。

 しかし、疑問だったのがプロ用途としての利用ができるか、ということ。そこで、実際に使用している機材をオンリースタイルの事務所に持ち込んで、バッテリーの性能をチェック。これまでの鉛バッテリーではできなかった満充電を期待していたのは言うまでもない。


事前チェックで性能を確認


 持ち込まれた機材は一般的には見られない大きなバッテリーだった。それは業務用ドローンのバッテリー。大きな一眼レフカメラを持ち上げるだけのハイパワーを絞り出すために、大量の電気が消費される。しかも、一台につき6個も利用するというから驚きだ。


 実際のフィールドではバッテリーの持ちが20分程度なので、すぐに撮影は中断してしまう。そして、サブのバッテリーに差し替えて、撮影を続けるという過酷な状況。バッテリーは2セット用意され、常に充電している状態となる。

 このプロの現場の使用に耐えるかが大きなポイントであったが、オンリースタイルのリチウムイオン電池は計12個のバッテリーを充電するには十分な性能を発揮した。充電器1台に6個のバッテリーをセットし、その充電器を2つ繋いで、実験。消費電力計は1285Wを示していた。


キャンピングカーへのシステム構築


 消費電力はバッテリー充電器とは思えないぐらいの高い数値だったが、ドローン用バッテリーは確実に充電されていった。これまでは6個ですら十分に充電できなかったので、その結果には満足。そして、リチウムイオンバッテリーをメインにしたシステム構築がスタートした。


 以前、林氏はモーターグライダーに乗って空撮を行っていた。その時に使っていたクルマがトヨタのタンドラ。グライダーのガソリン臭が車内に充満するのを避けて、ピックアップトラックを選択。しかも、大型のクルマが必要だったので、北米から輸入したという。


 そして、よく撮影に訪れていたのが長野県の小谷村だった。自然が広がり、四季を感じる色彩が美しい場所。そんなゆかりのある小谷村で、1年間を通じての撮影を依頼されたのだ。拠点となる場所を探したが、最終的に機動性を考えてキャンピングカーとなった。


 自走式キャンピングカーなども検討したが、走りも乗り心地も気に入っていたタンドラをベースにトラキャンを選択。クルマは山梨県のミスティックに依頼することになった。オンリースタイル、ミスティック、両社の協力で、プロ仕様のキャンピングカーが誕生した。


ダブルバッテリーにソーラーパネル

 事務所での実験結果より、連続しての利用を考えて、200Aのバッテリーを2台積み込むことになった。コンパクトとはいえ、場所の確保には一苦労。一般的なトラキャンであればダイネットとしてベンチが設置されるが、フロアを立ち上げたお座敷スタイルに変更して床下にバッテリーを収納。


 ソーラーパネルもオンリースタイルが扱っている高出力モデル。もし、ソーラーパネルを3枚搭載すると、充電コントローラーの負荷も大きいということで、容量に余裕のある大型タイプを最初から設置し、システムのパワーアップにも対応できる万全の設備が整った。

 また、森の中に入ってしまったら、電源のフックアップができないので、245Wのソーラーを2台組み込んだ。設置場所はルーフトップで、フロント側に2枚が縦に並んでいる。リア側にもスペースがあるが、電力の様子を見て、ソーラーの追加ができるようにスペースを空けていある。



システム構成

機器商品名個数
バッテリーリチウムイオンバッテリー2500Wh/200Ah2
充電器急速充電器 マルチチャージャー1
ソーラーパネルSUNPOWER 245Wソーラーパネル2
充電コントローラー充電コントローラーMPPT60A1
残量計ボトロニックバッテリー残量計1
インバーター電菱 SK1500W1
走行充電器NEW-ERA SBC-002A1

ソーラーの力で業務用ドローンを飛ばす


 林氏のキャンピングカーでの生活は年間200日を超える。小谷村に広がる自然の魅力を追い求め、深い自然へ足を踏み入れていく毎日だ。そのフィールドで活躍しているのが、今回のリチウムイオンバッテリーシステム。その実際の稼働状況は、以前の事務所で感じた驚きと同じだった。


 「キャンピングカーで普段の生活をしながら、ドローンのバッテリー充電もしっかりと行われています。ソーラーパネルのおかげで、電力不足を感じたことはありません。仕事で使う電力ですので、安心して使えることで撮影に集中できます」という。


 システムの実験を行ったオンリースタイル、バッテリーや設備を設置したミスティックプランニング、各社の協力で完成したシステムが、小谷村の美しい景色を切り取っている。林氏の作品を見て、そのエネルギーがこのシステムから生まれているのを実感してみるのもいいだろう。


自然と歴史に抱かれた美しき小谷村(撮影:林氏)

小谷村にある日本百名山の雨飾山(あまかざりやま)と400年の歴史をほこる小谷温泉(山田旅館)の空撮写真。
さらに作品を見たい人はwww.meilin.jpを参照。